古い給湯器の危険性
給湯器はお湯を作る機械ですが、やはり年数が経ってくると故障してお湯が作れなくなります。本当にお湯が出なくなる故障の仕方もありますが、ほとんどはお湯はりができなくなったり、お湯が出たり出なかったり、ちょっと我慢して使おうかなあと思わせるような壊れ方が多いでしょう。なのでついつい、故障しているにも関わらずそのまま使用してしまうのが現実です。
不良品以外で故障する原因としてまず考えられるのが「老朽化」です。古くなった給湯器はいずれ完全に使うことができなくなります。ですが上で書いた通り、まだ使えそうな状態だったりすることがあるため、なかなか早期交換する方は少ないかと思います。
長く大切に使うことが正しい、壊れても修理を続けて使っていく、というのが美徳とされることもありますが、給湯器に対してはこの考えは禁物です。というのも給湯器は「ガス」や「電気」を扱う機器であり、ほぼ毎日お湯も使うことでしょうから毎日部品も摩耗していきます。もし壊れたまま使い続けるとどうなるでしょうか。ガス・電気を扱う製品については、命に関わる事故が起きる危険性があります。
そこで皆様には古くなった給湯器の危険性について知って頂くためにも、以下のような内容でまとめてみましたので参考にお読みいただければ幸いです。
給湯器の仕組み
一体どのような危険があるのか、まずは給湯器の仕組みを知ってから考えていきましょう。
給湯器の中身
給湯器の中を見る機会はなかなかありませんが、フタを開けてみるとごちゃごちゃとした配線や、お湯を沸かす心臓部分である熱交換器・銅製の釜、そして水が通っていく銅管、ガス管、ファンモーターなど様々な部品が詰まっています。
お湯が沸く仕組み
お湯が出来る仕組みはシンプルで、ガスバーナーを使用してお湯を沸かしています。火の温度は約1500℃、熱交換器で瞬間的に温められたお湯が給湯器から家の中の配管を通って蛇口から出ます。ただ沸かすだけでは熱湯しか出てきませんが、電気で制御されている給湯器はリモコンの設定した温度になるよう調節してお湯を作ります。そのため、壁に取り付けてあるリモコンも壁の裏で給湯器と配線でつながっているのです。
お湯が沸くまでの流れ
流れとしては、蛇口をひねるとまず給湯器の中へと水が流れていきます。それを検知してイグナイターと呼ばれる火花を発生させる部品がつき、ファンモーターと送り込まれたガスによってバーナーが点火します。そしてガス量を検知しガスの量を調節、水の量を検知し水の量を調節、適切な温度になるよう温度センサーが検知し、蛇口へお湯が送られます。お湯を沸かすときにでる二酸化炭素は屋外へと排気されます。これらの動作は水が流れてからなんと1秒で制御されます。
その他にもブレーカや基板・ヒューズなど細かい部品で構成されています。
昔であれば薪を燃やして火加減を調節しながら風呂釜にはった水を沸かしていましたが、今は機械が自動でやってくれます。これが給湯器です。
どの部品が壊れるかはわからない
このような細かい部品のどれが故障するかはわかりませんし、万が一故障しても素人ではどの部品に原因があるのか特定することは難しいです。
また給湯器は目に付く場所にあるわけでもないため、ちょっと壊れたとしても危険性に関しては意識しにくくなります。
ではどのような危険があるか、実際に起こったケースを含めて紹介していきます。
危険な事故:不完全燃焼
この「不完全燃焼」は、給湯器が故障して起こる最も危険な事故と言えるでしょう。不完全燃焼が起こる状況としては、酸素が十分に給湯器内に送り込まれない状態であること。通常は青い火になるところ、不完全燃焼を起こすとオレンジ色・赤い色の火が出ます。そして不完全燃焼を起こすと「一酸化炭素」が発生します。
一酸化炭素中毒とは
一酸化炭素は無色・無臭のため、発生しても私たちが気づく事ができません。毒性が強く5㎥の浴室の空気中にたった0.04%発生するだけで吐き気や頭痛がでてきて、0.16%になると2時間で死亡、0.32%で30分で死亡、1.28%にもなると1~3分間で死亡してしまいます。給湯器以外にも雪に埋もれた車の中なども危険です。
瞬間湯沸かし器の一酸化炭素中毒になるケース
瞬間湯沸かし器の場合、換気を怠った、または古くなった給湯器で水漏れが起きておりバーナーに水がかかって不完全燃焼を起こすこともあります。また煙突式の風呂釜をつかっている場合、瞬間湯沸かし器と同時に使用すると排気が逆流し不完全燃焼を起こし一酸化炭素中毒になることがあります。煙突式のふろがまと同時使用は行ってはいけません。
給湯器の一酸化炭素中毒になるケース
給湯器は屋外にあることが多いですが、屋外でも気をつけましょう。丁度いい位置にあるとついつい物を置いてしまったり、給湯器をDIYで囲ってしまったり、排気口が建物と近すぎる場合など。排気口から出る排気ガスが屋根などにたまるような構造になると、浴室内だけでなく他の部屋で一酸化炭素中毒が起きることもあります。また老朽化で起こる不完全燃焼は、部品が故障、漏水、排気口にたまったゴミ・ホコリ、排気口の破損・折れたり穴が開いたりなどして起こることもあります。
火がすぐ消えてしまう(安全装置が作動している)、火がオレンジ色になっている、一酸化炭素が出るとススが出て給湯器が黒くなる、黒い煙が出たりするので、変化に注意して使用をやめましょう。また給湯器の排気管も物で塞がれていないか、壊れていないかチェックするようにしましょう。
危険な事故:漏電・感電
漏水は不完全燃焼を起こす原因ともなりますが、漏電を起こす原因にもなります。漏水、または雨漏り、給湯器が古くなったり破損したりして中に雨が入ってくると漏電を起こす危険があります。通常は漏電を感知するとブレーカーが落ちて給湯器が使えないようになるため、その時点で交換を行えば大丈夫ですが、古い給湯器のブレーカーが作動しない、アースがなかった、など危険な状態のまま使用してしまうこともあります。そうすると、蛇口を触った時にビリビリしびれたりする場合もあるので、早めに修理・交換しましょう。
危険な事故:火災
安全装置がない古い給湯器や、安全装置が故障している給湯器、すすがたまった古い給湯器・不完全燃焼を放置し異常燃焼を続けている給湯器、ガス漏れしている給湯器など、老朽化が原因で火災が発生します。10年以上使用している製品で、2017年の過去5年間の発火による事故は435件発生しています。
老朽化以外の危険なケース
主に老朽化による危険な事故をご紹介しましたが、これらの事故はほかの原因で起こる事もあります。
資格のない者が設置、または設置不良・違法改造
今では情報がインターネットで溢れておりDIYも流行っています。これぐらい自分でできると思って部品を交換したら正しく付けられていなかった、ほかの部品に干渉して更に故障する場合があります。また設置技術がない、設置知識がない、修理と称して違法な改造を行うなど、あとあと事故繋がることがあるので危険です。給湯器の修理、取り付け工事は資格が必要ですので、業者に必ず任せましょう。
10年目には点検をする
メーカーに住所を登録しておくと、10年経つと点検のお知らせ通知が来ます。このタイミングで点検は行っておきましょう。
10年が給湯器の耐用年数とされていますので、10年目を迎えた給湯器は交換するのもお勧めします。
事故に遭わない為にも、まだ使えるからと古い給湯器を使っていくことはやめましょう。